●14日目 - マンチェスター
さて、ギルフォードでのショーも終わり、何故か再び私たちはマンチェスターへ向かうのです。一体私たちは何をやってるんだという所ですが、例のボルトンのマーティンが何やらマンチェスターでビッグなビッグなイベントを行うらしい。是非参加してくれという事で、もうその次の日は帰国するというのに、のこのこマンチェスターへ舞い戻るのです。
ギルフォードからマンチェスターまでは直行で行けませんので、ロンドンのユーストン駅へ出て、列車を乗り換えて出発です。
また戻って来たマンチェスター。再びこの日の夜はBBC裏手のDAYS INNに泊まります。しかし翌朝ここを出てロンドンに戻り、そのままヒースローに行かなければいけないというとても無茶無謀なプラン。
昼間は何もする事がないので街をブラブラ。この日のイベントは秘密のイベントで誰もどこで開催されるのか知らないのです。私たちには直前になってもマーティンから連絡がないので大慌て。夕方になると、マークと、マークが所属しているレーベルの社長とアシスタントのようなものすっごい女性が来ました。
レーベルの社長は、いかにもジャンキーと言ったヤバい目つきをした人でした。アシスタント(社長の恋人)は真っ赤な髪の毛でクレオパトラみたいな化粧をし、肝っ玉母さんといった風貌の人でした。
実は、この為に相棒はロンドンからベンジーを呼んでいたのです。ベンジーはまだプロではないが、一応写真家みたいな事もやっている。なので、この日の様子を写真に撮ってもらおうと、無理を言って来てもらったのです。
イベントが行われる細かい場所は教えてもらってないけど、トラムに乗ってTrafford Barという駅まで行く事に。駅にマーティンが迎えにくるという事でした。というわけで、総勢7人でトラムに乗ってTrafford Barへ。
到着すると雨が降っていました。小さなトラムの駅と言うかただのプラットフォームなので待つ場所もなく、バス停くらいの大きさの屋根のかかる所で7人がぎゅうぎゅう詰め。お迎えの車もなかなか来ません。
ちょっと不機嫌になるレーベルの社長とアシスタント…。
そこに、対向車のトラムが到着。トラムが去って行ったと思ったら突然
「○×☆?♪△!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
私たちのバンド名を呼ぶ人だかりがプラットフォームに現れた。
え??と思ってみると、ボルトンの子達がわさわさとたくさんいました。知らない町でたくさんの知ってる顔を見つけられてほっとする私たち。住んでない国に知ってる人がたくさんいるのって素直に嬉しいよなぁ。
相棒がボルトン組に「マーティンが迎えに来ないんだ」と話すと、場所は知ってるから一緒に歩いて行こうという事になった。社長も子供達にまじって歩く。(笑)
すると、同じ方角に行くティーンの子達の数が倍々に膨れ上がって行く。一体どんなイベントなんだ!?
到着した所は、だだっ広い空き地に何やらもう誰も使っていない半分崩れかけの倉庫。ココでやるのかよ!(笑)もう集まるティーンの数は…街灯もなく暗かったからよく見えないけど、1000は超えてる。マーティンによれば数千人集まるという話だった。
すると、ライトを点灯させながらある車両がゆっくり近づいて来た。パトカーだ…。
パトカーが取り締まりに来てしまったんです。今日のイベントは許可を取っていないアンダーグラウンドな違法イベントだったのです。何台かのパトカーから複数の警官が出て来て、ものすごい強い懐中電灯でこっちを照らす。
ヤバい、マズい、俺たちは逃げた方がいい!と言っているのに、ケイシーは警官の質問にのうのうと答えている。ヤバいってケイシー!
取りあえず、私たちは倉庫から離れました。そして様子見。群衆に翻弄され、マークと社長カップルを見失ってしまった。
警官が見張っておりイベントどころではない。そしてパトロールしながら「もうパーティーは終わり。大人しく家に帰りなさい」と拡声器でアナウンスしている。(笑)
群衆である子供達も割と大人しく動き始めた。それぞれご飯を食べに行くもの、トラムに乗って中心部に移動するもの達。私たちベンジーを含めた4人は、ボルトン組について行く事にした。ボルトン組は「マーティンはこんな時の為にプランBを考えてあるんだ」という事で、プランBが行われるであろうマンチェスター中心部に戻った。
Trafford Barのプラットフォームは群衆で溢れかえっている。そこに一台のトラムが入って来た。中はおじいちゃん一人が乗っている。タトゥーやら真っ赤な毛、思い思いの格好をした子達が群衆となってトラムに乗り込む。唖然とした顔で、また困ったような顔でうつむくおじいちゃん…。さらに車内はワイワイガヤガヤ騒がしい。
マンチェスターに到着し、ボルトン組と雨の中歩き、ある地点でマーティンからの連絡を待つ。時間はもう夜中の11時も過ぎた頃。しばらく待っても連絡はこない。結構寒い。しかも雨に濡れていたので服がびっしょりでさらに寒い。
相棒が、もう十分楽しんだから帰ろうかと言い出した。そうなのだ、明日は朝8時半の列車に乗って帰国しなければいけない。仕方なしにボルトンの子達とお別れ。
その時、ルーシーが寂しそうな顔をして(特にケイシーに)私たちバンドのメンバーを一人一人ハグしてくれた。なんかちょっと切ない気分になる。彼女から教えてもらった訛りのあるLovelyという言葉が頭から離れない。カタカナで書くとこんな感じ→「ォヴリー」
マークと社長がどこに行ったか連絡をとってみると、私たちホテルのならびにある「レトロバー」にいると言う。レトロバーに向かってみる。中に入ろうとすると、もう閉店時間だからとドアの人に入店を遮られた。それを見ていたマークが「知り合いなんです」と言ってもダメ。すると何やらオカマみたいなおじちゃんがクネクネ出て来て「あらあら、どうしたの?いいのよ、今日は特別。入れておあげなさい」と言う。
オカマのおじちゃんはアンディーと言うお店のマスターだった。
再び7人が揃った。この日起こった出来事をアンディーを交え口々に話し、私は奮発して(マークのおごりだけど)「ジャコバイト」というスコッチを注文。一口で頭がぐるんぐるんする。そういえば、夕飯を食べていない。空腹ですっかり酔ってしまったのでそれ以上飲めなかった。(苦)
もうお店から他のお客も追い出され、しばし私たちだけの時間。スタッフは片付けを始めている。その時、マスターの恋人なのか知り合いなのか、もう一人ゲイのおじちゃんが出て来た。スキンヘッドで厳つい姿だが、声はおばさん。相棒の事を見て「あ〜ら、あなたとってもキュート!あれね、スクビードゥーのあれ(シャギー)に似てるわ」私、大笑い。私も日頃から似てる似てると言っていた。
閉店後、マークと社長と慌ただしくお別れし、ベンジーと相棒と私はカレー&チップスを食べに行く事になった。いつの間にか3人で腕を組んで歌いながら歩いていた。なんの歌かは忘れたけど、やけに楽しかった。